ジャズの構成を解説

ジャズの構成を知っていますか?

ジャズリスナーのための基礎知識としてジャズの構成を解説します

あなたは、ジャズの曲の構成を知っていますか?
ジャズを聴いて楽しむことができますか?
  • アドリブって聞くけど?
  • アレンジじゃないの?
  • 演奏が良くわからないよね?
  • おしゃれっぽいよね?
  • そもそもジャズって何?
実際に、ほとんどの人はジャズの曲の構成を知りません。「ジャズは良くわからない」と思うのは、曲の構成を知らないため、演奏者が何をしているかわからないからではないでしょうか?
この記事では、ジャズリスナーとしてジャズを楽しむために必要な基礎知識として「ジャズの曲の構成」を解説します。

ジャズの構成を理解する4つのポイント

ジャズの構成を理解するためのポイントは4つあります。
これらを順を追って解説していきます。
  1. 曲には「テーマ」と「コード進行」が決まっている
  2. 曲の「コード進行」は繰り返される
  3. 曲の流れは「テーマ」→「アドリブソロ」→「テーマ」
  4. 「アドリブソロ」では「コード進行」に合わせてアドリブで演奏する

1.ジャズの曲は「テーマ」と「コード進行」が決まっている

※「テーマ」とは曲の「メロディー」のことです。
例えば、「Take The A Train」の譜面を見てみましょう。これらの曲の譜面を見るとメロディーとコードだけが書かれています。音楽理論を学んだジャズミュージシャンは、この譜面をもとに複雑な演奏を行っているのです。「Take The A Train」を譜面どおりに弾くと、子供のピアノの発表会みたいな演奏になってしまいます。

<譜面通りの演奏>


ジャズではメロディーはくずし、コードを元のコードと同じ性質を持つ音に置き換えます。コードはあえて弾かなくても、和音でも、単音でも好きに置き換えて良いです。ただし、合わない音を弾いてしまうと不快なだけですから、それを防ぐ意味でもこの時点で最低限の音楽理論の習得と技術が求められるのです。「Take The A Train」のメロディーをくずし、コードを置き換えた例はこうです。

<アレンジした演奏>


ジャズの譜面は「テーマ(メロディ)」と「コード」だけで構成されているのです。これだけの情報しかないのにもかかわらず、音楽理論を勉強しアレンジのトレーニングもしてきたジャズピアニストは、いとも簡単に複雑で独創的な演奏にアレンジすることができるのです。一般の方には信じられない話かもしれませんが、音楽を勉強し、訓練すれば、できるようになるものです。

2.曲の「コード進行」は繰り返される

一般的に、ジャズの曲は32小節程度の曲が多いです。先ほど紹介した「Take The A Train」も32小節です。32小節だけでは1曲あたり1分以内で終わります。実際のジャズの演奏では、この短い曲を弾き終わると譜面の最初に戻り、同じコード進行の伴奏を繰り返すのです。こうして1曲あたり1〜2分の曲の譜面を何周もしながら長時間の演奏に仕上げているのです。

ここで皆さんがジャズをより楽しむために、試してほしい事があります。それは、「頭の中で曲のテーマを何周も繰り返しながらジャズを聴くこと」です。

ジャズのテーマはコード進行に合うように作曲されています。すなわち、コード進行が何周も繰り返されている間、テーマを頭の中で繰り返すと、コード進行の伴奏と頭の中のテーマがしっかりとハマるのです。最初は難しいかもしれませんが、同じ曲を続けて聞いていくと、わかるようになってきます。これができるかどうかが、ジャズを楽しめるかどうかを左右します。まずは知っている曲や有名な曲だけで構いませんので、頭の中で曲のテーマを繰り返しながら聴くように心がけてみてください。

3.曲の流れは、「テーマ」→「アドリブソロ」→「テーマ」

基本的に、譜面の1周目はテーマを演奏します。譜面の2周目以降は、楽器ごとのアドリブソロが入ります。アドリブソロの後にテーマを1周弾いて曲が終わりとなります。
テーマで始まり、テーマで終わる。これがジャズの基本形です。

4.「アドリブソロ」では「コード進行」に沿ってアドリブで演奏する

4-1通常のアドリブソロ

アドリブソロは、各演奏者の腕の見せ所です。テーマを弾き終わったら、各メンバーのアドリブソロに移ります。アドリブソロの順番は決まりはありません。すべての楽器がソロをとらなくても良いのです。ただし、アドリブソロにおいて暗黙のルールがあります。
  • アドリブソロの演奏者が交代するタイミングは、譜面が次の周回に移る時
  • アドリブからテーマに移るタイミングは、譜面が次の周回に移る時
要するに、キリが良いタイミングで曲の構成を変えていくということです。これらの暗黙の規則性があるおかげで、アドリブとは思えないような息の合った演奏ができるのです。

4-2特殊なアドリブソロ「バース」

ジャズでは、ドラムもアドリブソロをとります。ジャズを聴いていて、ドラムが何周ものアドリブソロを演奏していたら皆さんはどう感じるでしょうか?もちろん、素晴らしいドラムのソロはたくさんあります。しかし、ドラムのアドリブソロをずっと聴かされたら、不快に感じる方も多いと思います。
そこで、ドラムのアドリブソロを一曲の中に適度に埋め込むために「バース」という演奏法が使われることが多いです。これは、ドラムと他の楽器のアドリブソロを一定の小節数ごとに交互に演奏し、譜面1周分のアドリブソロを構成する方法です。こうすることで聴きやすさを保ちつつ、ドラムにスポットライトをあてているのです。

「バース」の構成例

例えば、32小節の曲をサックス・ピアノ・ドラムが4小節のバースを行うと、このようになります。
1:サックス(4小節)
2:ドラム(4小節)
3:ピアノ(4小節)
4:ドラム(4小節)
5:サックス(4小節)
6:ドラム(4小節)
7:ピアノ(4小節)
8:ドラム(4小節)
 1~8を演奏すると合計で32小節。譜面1周分のドラムソロを兼ねた4バースが構成されます。

交代する小節数によって、下記のように呼ばれます。
2小節:ツーバース
4小節:フォーバース
8小節:エイトバース

上記の例では、ドラムソロで例えましたがドラム以外の楽器でもバースは使われます。サックス、トランペット、ピアノ、ギター、ベースなどなど、その時の演奏者の意思によって演奏方法は様々です。8バースで始まり、途中で4バースに変化することもよくあります。

4つのポイントを活かしてジャズを聴く

ジャズの構成について4つのポイントを紹介してきました。これらの知識を活かして、リスナーの皆さんジャズが楽しむために改めてお願いしたいとことがあります。

それは、「頭の中で曲のテーマを何周も繰り返しながらジャズを聴くこと」です。

アドリブソロの間、頭の中で曲のテーマを繰り返すと、伴奏のコード進行と頭の中のテーマメロディーがしっかりとハマるのです!意味不明であったアドリブソロが、実は演奏者の編曲のアイデアに満ち溢れたとても面白い演奏に感じる事ができるのです!慣れれば、アドリブソロの演奏がテーマのどの場所を演奏しているか、わかるようになります。

すると・・・
  • そろそろアドリブの演奏者が変わりそうだな?
  • そろそろテーマに移りそうだな?
  • 自分のソロが終わる事をほかの奏者に伝わるように弾いたな?
という演奏者の意図まで汲み取る事ができるのです。たくさん聴いているうちに、アドリブソロを聴くだけで演奏者が曲をどのように進めたいのか感じ取れるようになるのです!

ジャズを楽しんで聴くために

さて、ここまで読まれた皆さんは、ジャズという音楽の概要は理解できたと思っていただいて大丈夫です。今回は基礎知識ということで一般的な曲の構成について記載しました。多くの曲が上記に当てはまることを確認しながらジャズを聴いてみてください。

例外はもちろんあります。テーマの前後にはイントロとエンディングが加えられます。バラードのようなスローテンポの曲では、譜面を1周だけ演奏し、その一部にアドリブソロを入れて仕上げている演奏もあります。あえてこれらの暗黙のルールから外れるような演奏方法をする事で新しさを追求しているアーティストもいます。ただし、1曲の構成は譜面1周の積み重ねでできていることは間違いありません

アーティストの編曲のすばらしさを感じるために、テーマを頭で繰り返しながら聴いてみてくださいよく知っている曲を聞き比べてみるとより多くの発見ができるでしょう。また、「曲を知る」こともジャズを楽しむために必要な事です。曲のテーマメロディを知らないと、頭のなかで繰り返すことができません。まずは知っている曲から。ジャズって面白いなと感じたら、好みの曲を探してみて、聴き比べてみてください。

ジャズの定番曲については記事「ジャズスタンダードを解説」をご覧ください。曲のリストも併せて紹介しています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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